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ハッカーマインドと3冊のエッセイ
Aug 16, 2015
5 minutes read

ハッカー3大エッセイとは自分が勝手に呼んでいるだけなのだが、『ハッカーと画家』『UNIXという考え方』『それが僕には楽しかったから』の3冊のことである。しかし『それがぼくには』は重要な一冊だと思うんだけど、なんでまた絶版なんですかね。そんな古い本でもないのに。仕方なく図書館で借りたけど。

いわゆるハッカーマインドを描いた本としていずれも似たような印象を抱きがちだが、実際に読んでみるとスタンスはだいぶ異なる。『ハッカーと画家』はコンピュータについてあまり詳しくない人に対して、ハッカーというのはこういう人種なのだと切々と説いた本であり、故にそれほど挑発的な印象は受けず、すらすらと読み進めていくことができる。もっともこれがハッカー以外に理解できるかというとかなり疑問ではあるが、ハッカーが比較的客観的に自らを解き明かした本として参考にはなる。著者のポール・グレアムのエッセイはnaoya_t氏による和訳がいくらか読めるので、これを読んで興味をそそられたら読んでみるのでもいいかもしれない。あと、Lispめっちゃ推してる。

『UNIXという考え方』は、ハッカー向けにハッカーマインド、というかUNIX哲学を説く本なので、これは3冊の中では最も「読むべき」本だと思った。プログラムの移植性が重要であることだとか、ソフトウェアのレバレッジを効かせて効率性を最大限に高めていくべきだとか、我々がコードを書いたりシステムを作る上で重視すべきことがいくつも盛り込まれている。

『それがぼくには楽しかったから』はまさにエッセイ、リーナス・トーヴァルズの半生を描いたもので、ハッカーマインド云々というよりはだいぶ読み物チック。終盤で著作権やOSSといった概念に対するリーナスの考え方が少し語られるが、ほとんどはLinuxがいかにして生まれたのか?を描いた物語と言っていい。自分はリーナスというハッカーをこれまで詳しくは知らなかったのだが、案外柔軟な人物であるという印象を受けた。OSSの考え方自体は肯定しながらも、それは押し付けるべきではない、具体的に名前を挙げてリチャード・ストールマンのやり方は強引に過ぎるとしていたり、自分は聖人君子ではなく、大金が舞い込んだときには当然喜んでしまったこともあるよなんて語っていたり、彼の人間性がとても良く出ている。まぁとはいえ、自分が否とみなしたものに対しては、それなりに厳しい批判を飛ばす人物ではあると思うが。

こうした本に書かれた「ハッカーマインド」なるものは、我々が仕事をする上で必須のものではないと思うし、行き過ぎるとリーナスが言うような宗教戦争チックにもなりかねない。また技術に傾倒しすぎた単なるオタクが仕事の上でも重要な人物足りえるかというと、そういうわけでもない。リーナス・トーヴァルズは偉大なハッカーの1人であろうが、彼は同時にLinux開発者という立場での活動を行うにあたり、社会性を身につけたりもしてきたわけで。単にGeekであること自体が良いこととも自分は思えない。

とはいえ、まだ生成されてまもなく、業界標準なんてものがあるんだかないのだかもわからない、進化の速いこの業界で仕事をしていくには、多少なりともハッカー的なマインドは必要だとも思うのだ。というか、じゃないと仕事が面白くならないんでは? 惰性で同じ技術をずっと使い続けたり、効率の悪い方法を繰り返したりしていてもお金は入るのだろうけど、それが必ずしも収入に結びつかないとしても、なんかカッコイイことやってみたいとか、楽しそうな新技術にトライしてみたいだとか、そういう感覚がないとエンジニアをやっている意味がないなと思う。エンジニアが会社を選ぶにあたって重要なのは、案外このポイントなのではなかろうか。

残念ながら求人票からハッカーマインドは透けてこないし、転職面接の数分でそれを読み解くことも難しいだろう(自分は以前、面接でArch Linuxの話でたまたま意気投合する機会があったりして、そういう面接が出来たら話が別なのだろうけど)。その点、最近GitHubやQiitaでエンジニアたちが企業名を出して活動していることがあるが、あれは求人票やウェブサイトでは見えにくいその会社のハッカーマインドを、外部に知らしめていく良い手段だと感じる。ビジネス的に何を成して、社会をどう変えたいのかというよりも、エンジニアとしてどういったカタチで技術にコミットしていくかの方が自分には重要だ。そういう視点で仕事をしていけたらどんなにか幸せだろうし、またそれは茨の道でもあるのだろうなと思っている。

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