July Tech Festa 2018 に行って打ちのめされた
初めて July Tech Festa に行ってきた。「インフラエンジニアの夏の祭典」ということで、この手の終日、複数日カンファレンスだと、だいたいどこかしらでいつも「あまりわかりそうな話が無いなぁ」という時間枠が出来てしまうのだけど、今回は常に聴きたい話がいくつもあって、なんだか珍しい気分になれた。
聴いたのは以下のセッション。隅田川花火大会に行くというリア充めいた予定があったので、最後のメルカリさん招待講演を聴かずに切り上げている。
- ビッグデータと機械学習の狭間で 〜データエンジニアに求められる役割〜
- 強いインフラが組織を創る
- 【仕事は楽しい、ですよね?】経験談から語る、「一歩先を行く」ITエンジニアの競争戦略
- 運用におけるシェルの役割とそのあり方を考える
- サーバーやNW機器の構成・設定管理に困ってませんか?簡単に最新状況が把握できるインベントリ収集ツールの紹介
- “自律的運用に向けた第一歩” ~運用現場にあふれる情報をデータ化し機械的に学習できる状態に~
- AzureのLogAnalyticsでKubernetesを監視してみた
インフラエンジニアという言葉の拡散
今挙げたセッションの名前を見てもわりと明らかだと思うけど、インフラエンジニアの祭典というとこう、自宅でYAMAHAルーターで云々とか、ラズパイで云々とか、Linuxカーネルハックでどうのみたいのが浮かぶところ、そういうセッションはあまりなかった(ゼロではない)。クラウドファースト、SREの隆盛を受けてと言うべきか、もっと上のレイヤーや運用の話、プログラマブルなインフラ管理の話が多い。
別に2018年なので今更な話ではあるけど、なんというか「インフラエンジニア」という括りがあんまり機能しなくなってきたなという気がする。「インフラやってます」と言っていても、ある人は Go でインフラ管理のツールバリバリ書いていますだったり、ある人は Kubernetes めっちゃやってて ssh とか最近してないッスだったり、ある人は計算リソースめっちゃ必要なので、 Ansible と Serverspec で数千台のサーバーを毎日管理してますだったり、人によってやってること全然違ってきたなというのがある。 『ビッグデータと機械学習の狭間で』 では、機械学習で解析するための DWH やデータパイプラインの管理については、インフラエンジニアに任せるより専門のデータエンジニアを設けるべきだというような話が展開されて、そういうある分野に特化したインフラ担当というのも需要が出てきている。
自分も長らく「インフラエンジニア」を名乗ってはいたのだけど、最近は新卒の頃にやっていたような物理機器に触るような仕事や、DCに入るようなことも無くなってきていて、 VSCode やブラウザ上に開いた GUI コンソールで何かやっていることの方が多く、ちょうど最近 Twitter の bio も「Web Operation Engineer」に肩書を変えた(オライリーの『ウェブオペレーション』から拝借した)。インフラエンジニアです、ではなくて、その中で自分が抱えている問題のポイントは、注力ポイントはどこなのか、もう少しミクロに定義する必要性を感じる。
自分が実現できなかった理想との対面
この『最高のITエンジニアリングを支える守りと攻めの「設計技術」と「SRE」』というセッションは当日聴きたかったけれど別のセッションを聴いていて聴けなくて、今日資料を読んだところ、昨日聴いたどの話よりも打ちのめされた。SRE として日頃何をやってますとか、 1 -> 100 の話は多いけれど、 0 -> 1 のフェーズの話がないのでします、というコンセプトだったらしく、つまりはあまり綺麗ではない状態から、綺麗な状態へどう持っていこうとしたのかが具体的に泥臭く書かれていて、とても良い資料だと思った。あと話の進め方がすごく上手いですね、これ。
実際のところ、ここで言及されているドキュメンテーション、監視基盤の再確立、自動化、インフラのコード化といったあたりは、自分がここ2年ぐらい業務で進めていた内容とわりと符合していて、ただ一方でこの資料に書かれているレベルにまでは到達できていなかったりというところも多く、自分の振る舞いを批判的に見る契機となる資料だった。問題だらけの運用環境をどう改善していくか考えるにあたり、そもそも問題解決とは何かから考えて エンジニアの問題解決力とは何か · the world as code というエントリーをまとめたこともあったが、この資料でも「問題とは何か」という点に言及されているなど、とても頷ける場所が多い。そして共感できるからこそ、なぜその帰結が自分とこの方とでこうも違うのかな、というのを自ずと考えさせられて、打ちのめされた。要するにこれは、自分が実現したかった理想そのものとの対面に近かった。
なぜ理想を実現できなかったのか、その原因にここで言及してしまうとちょっと業務に寄りすぎてしまうので、今は避けるけれど、少なくとも「技術力が足りない」みたいな答えではないことは確かで、理想や知識や技術だけで組織や人や仕事を変えていけるわけじゃないですよね、というのはとてもよくわかった。今回、インフラエンジニアという括りのカンファレンスに足を運び、数多のセッションを目にすることでこの話に行き着けたのだと思うので、今回行って本当によかったなと思うし、似た思考の人を探す、見つける、議論するというのもすごく重要だなというのが身に沁みた。
今後について
勉強することもいろいろ思い至ったけれど、それ以上にインフラを土壌として戦っている人たちともっと触れ合うべきだなと思ったので、そういうの苦手なんだけどもう少しだけ積極的になってみようと思います。いつかこの場に登壇できたらいいですね。。